第三者意見

2013年度の丸紅CSR 活動に対する第三者意見

  • 駿河台大学経済経営学部教授、日本経営倫理学会副会長、博士(経営学) 水尾順一氏

駿河台大学経済経営学部教授
日本経営倫理学会副会長
博士(経営学) 水尾 順一 氏

日本経営品質学会副会長、東洋大学経営学部兼任講師、(社)経営倫理実践研究センター上席研究員他、著書『人にやさしい会社―安全・安心、絆の経営』白桃書房、『CSRで経営力を高める』東洋経済新報社、など

高く評価できる点

1. グローバル企業である総合商社の特性を生かし、社会と同社の価値をともに創出する活動が十分に開示されています。

今年度の特集記事から、LNGなどのエネルギーや、電力・水ビジネスのインフラなど、同社のコア・コンピタンス(中核能力)を生かしながら競争優位性を発揮している様子が十分に開示されています。また、食料や化学、金属、輸送機、生活産業など、総合商社の特性を生かし、それぞれの領域に関連する社会的課題の解決と、同社の経済的価値の一体化を図る姿勢も十分に知ることができます。同社のグローバルビジネスは、同社発祥の起源である近江商人の、「売り手よし、買い手よし、世間よし」に通じる「三方よしのCSR」を具現化したものということもできます。これらの活動は株主やアナリストなども含めた多様なステークホルダーからの理解と共感に結びつき、同社のコーポレートレピュテ-ションを高めることとなります。

2. CSRの国際的な動向を踏まえた取り組みが「見える化」されています。

2013年5月のGRI(※1)国際会議で発行されたGRIガイドラインの【G4】(※2)では、「事業や主要なステークホルダーにとって重要とされるテーマ」の洗い出しが求められています。同社の報告では、ステークホルダーとの対話や社会からの期待を確認し、自社への影響などを分析・検討しながら社会・環境的課題を抽出されており、マテリアリティ(重要性)が高い課題の特定と見直しのプロセスが「見える化」されています。国連グロ-バルコンパクトへの参加などもあわせ、国際的なイニシアチブを踏まえた取り組みとして高く評価することができます。

今後の改善に期待する点

CSRマネジメントの充実・強化に向けた、さらなる取り組みが期待されます。

CSRの理論と実践を進める立場である筆者の経験を踏まえて、同社の今後のCSR活動に期待することを述べたいと思います。1997年、筆者が当時勤務していた民間企業において、日本企業初の企業倫理委員会が設置され、筆者はその初代事務局リーダーに任命されました。当時の日本企業において、企業倫理は全く未知の領域であったため、どのように対応すべきかについて、先進地域であった米国企業を取材して知識を深めることにしました。多くの米国企業にヒアリングを行なってみると、トップダウンに加えて、社員が自らの目線で、現場の仲間たちと共に取り組むボトムアップによる活動も効果的であることがわかりました。筆者は1999年に企業を退職し、大学に移って研究者となり、現在、CSRやブランド・マネジメントの研究に取り組んでいますが、企業に勤務していたときに得た経験は、「CSRの知恵」として現在の研究活動にも活きています。
CSRに関しては、現場と一体になった取り組みが有効であり、社員の目線で、社会を見つめながら、計画(Plan)・実行(Do)・監査(Check)・見直し(Act)によるPDCAのマネジメントサイクルに活かすことが重要と考えます。このマネジメントサイクルと、筆者の経験から得たボトムアップによる取り組みの重要性に対する認識を、今後のCSRマネジメントにおける充実・強化策に活用していただき、経営理念にある「公明正大な企業活動を通じ、経済・社会の発展」の実現に向けて、CSR活動に取り組まれることを心から期待します。

  • ※1GRI:Global Reporting Initiativeの略で、オランダに本部を置きサステナビリティ・レポート(持続可能性報告書)作成のためのガイドラインを提唱する非営利団体。
  • ※2G4:2013年5月に公表されたGRIガイドラインの第4版。

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