紅浅葱紫縮緬地紋寄裂振袖
19世紀の第3四半期ごろの製作になる振りそでである。かなり皺(しぼ)の高い縮緬に、絞り染めで6種の文様を4色に染め分けた裂(きれ)地を縫い合わせている。不整形に切られた異なった色や文様の裂を縫い合わせて布面を作る方法を、縫い合わせとか、切り継ぎ、あるいは寄せ裂と呼んでいる。
小裂をはぎ合わせて、ある広さを持った布面を作るという考え方は、裂地の不足を補うためとか、残り裂の利用などから自然に考えられたものと思われるが、後には、はぎ合わせによって別の文様を構成することを目的とした美術的な意図の下に作られるようになった。その結果、寄せ裂を一つの文様と見なし、更紗や友禅の染柄にもそのパターンは利用されるようになった。
この振りそでは、寄せ裂文様の面白さに魅せられて、それぞれ1メートル余りの裂をはぎ合わせによって構成、切り継ぎしたもので、むしろ大変手間のかかったぜいたくな品である。一見、余り裂を寄せ集めた廃物利用のように見せかけながら、実は非常に高価な一品ものであるところに、江戸時代後期の封建社会の矛盾の中に生きていた富裕な町人階層の屈折した心理がうかがい知れる貴重な資料である。
京都島原の傾城が着用したものと言われる。




