Scope #11

Helena Chemical Company

アメリカの農家と共に成長する"人"のへレナ

By James Simms

メンフィス、テネシー州 ── 当たり前のことだが、固形物を散布するのは難しい。

3世代に亘って綿花農業を営むブラッド・ウィリアムズ氏に、何千エーカーもの土地に2種類の液体除草剤を撒いた時のことを聞いてみよう。

10分もすると、2種類の液体除草剤がブロック状に固まってしまったという。1日や2日の遅れが収穫に影響してしまうようなタイトなスケジュールで進めている農業にとって、これは一大事だった。すぐさま除草剤を販売したディーラーに電話をする。ディーラーはただ他人事のように肩をすくめるだけだろうか?それとも永遠にたらい回しにされるヘルプデスクに電話をするように言うだけだろうか?


しかし、ウィリアムズ氏がヘレナ・ケミカル・カンパニーの担当者に連絡すると驚くべき対応が待っていた。ヘレナの担当者は急いでメンフィス近郊にあるヘレナのR&Dラボとやりとりをし、「ラボでテストをしてみると、2つの除草剤を混ぜてはいけないということが分かりました」とすぐに連絡してきたのだ。

「この出来事でヘレナが強く印象付けられました」とウィリアムズ氏は言う。かれこれ20年ヘレナと取引をしており、農業資材の7割はヘレナから購入しているという。「ヘレナは期待を遥かに超えた対応をしてくれるのです」

スティーブン・フィンチャー氏はテネシー州のフロッグ・ジャンプという土地で7世代に亘って農業を営んでいる。かつて、彼の農場でとあるメーカーの製品によって大きな問題が発生した時、ヘレナが問題解決に奔走してくれたという。ヘレナが製造した訳ではなかったにもかかわらずだ。その問題によって、彼は1年の利益をまるまる失うところだったという。


「ヘレナが一緒に問題に対応してくれたおかげで、50万ドルもの損害を免れることができました。他のどの会社でもヘレナと同じ対応はできなかったでしょう。」誠実さと専門性に対する高い評価がメーカーを動かしたのだとフィンチャー氏は言う。「非常に素晴らしい仕事をしてくれました。」

期待を超える対応で顧客を驚かす―これはヘレナでは珍しいことではない。

1957年、ヘレナは、アーカンソーにあるその社名の由来ともなった町の、一軒の農薬販売代理店として始まった。今では米国の種子、肥料、農薬などの農業資材のマーケットで、利益ベースで第2位にまで成長した。それでも、顧客のニーズに応える力を磨くことに終わりはない。この取り組みは農場で、オフィスで、ラボで働くヘレナの社員にとって最も重要な事項である。


「私は決して単独のステークホルダーだけを考えることはしません。顧客も、私たちの社員もまた、ステークホルダーなのです」CEOのマイク・マッカーティー氏は言う。そして「顧客がヘレナを自分達のビジネスの一部と考えてくれること」が、つまりは顧客の成功にもヘレナの成功にも繋がるのだという。

重要な岐路で、ヘレナは付加価値のある製品にシフトした

マッカーティー氏は1980年にヘレナに入社した。1996年に彼がCEOとなった時、ヘレナは岐路に立っていた。当時のヘレナは、農薬が売上の7割を占めていたが、新しいバイオテクノロジーによるこれら製品の置き換えが始まっていた。


2001年から2002年にかけて、本社や現場からのフィードバックをもとに、新しい戦略を打ち出した。それは採算性の低い拠点から撤退し、高付加価値の製品やサービスにシフトするというものだった。2001年の丸紅からの1億ドルの増資によって、ヘレナのセルフファイナンスが可能になったことも大きかった。

農薬に加え、肥料や種子、さらに、高付加価値のHPGと呼んでいる私たち独自の商品を揃えることで、製品ラインナップが多様化したのです」

この新しい戦略によって、2001年から2016年の間にROEは約四倍の20%近くまで改善し、売上は3倍の45億ドルに成長、売上に占めるHPGの割合は2倍になった。


大規模な農業資材ディストリビューターの中で唯一、自分達のラボを持っているヘレナでは、自社の独自商品(HPG)が開発されている。HPGには、農薬の添加剤や、農家の利益に直結する様々な商品が開発されている。

これらの製品は例えば、肥料に混ぜることで吸収率を上げたり、農薬の効果を高めたりする。少ない散布でも従来の効果を維持または改善することで、農家の生産性を向上させ、環境にもやさしい。


この10年間、HPGの拡販のような自律的な成長と共に、営業地域の拡大を主目的とした拠点買収がヘレナの成長に寄与してきた。加えて、航空散布サービスや農家へのファイナンスなど新しいビジネスも拡大している。マッカーティー氏は次のステップとして、独自の精密農業サービスであるAGRIntelligenceの大幅なバージョンアップを見込んでおり、最先端の技術を活用し、ヘレナの営業力の更なる強化が可能になると言う。これによって、農家は資材投下に係わる意思決定をより科学的、合理的に行うことが出来るようになる。

これが、世界的に穀物市況が低迷し、米国の農家純収入が過去3~4年で40~50%低下し投資心理が冷え込んだにもかかわらず、ヘレナが好調を維持し続けているゆえんである。

ヘレナのような会社はどこにでもあるわけではない

しかし、柔軟性を保ちながら利益も維持するのは簡単なことではない。

「時に、私たちはこの20年に起こったことを忘れてしまいます。平坦な道のりではありませんでした。」マッカーティー氏は言う。「ヘレナがどうして成功することができたか。それは、“人”です。多くの人が「次なるヘレナ」を探しています。私たちだって見つけたい。でも、近道は存在しないのです。時間をかけて育てていかなければいけない。正しい姿勢で臨めば、次なるヘレナは育てられるのです。」


現状に満足したり、変革を恐れたり、過去の成功に固執したり―将来の成功の敵であるこれらの困難が、ヘレナの前にも立ちはだかってきた。しかし、社員が新しい製品・サービスのアイディアや課題について自由に話すことのできるオープンなカルチャー、そして変わることの必要性とそのやり方を繰り返し社内に説明することによって、克服できるのだという。

「すべては人なのです。どんなアイディアでも、それが誰のアイディアでも、耳を傾け、目を開いて見ていれば、長く続くオープンなカルチャーを育てることができます」彼は言う。「周囲は常にどんどん変わっていく。私たちも進化し変化し続けなければならない。そして一旦こうしたマインドセットが浸透すれば、変化することは少しだけ簡単になります。」


テネシー州にあるヘレナのメイソン支店のマネージャー、バリー・マクスウェル氏は、13年前に競合会社から転職してきた。彼は、ヘレナはオープンマインドな会社だという。「役員でも、ディビジョン長でも支店長でも、誰とでも気軽に話すことができる。どんな話でも持っていけるよ。」

実際に、何千人もの社員の考えを取り入れようとする努力は、別の成果にも繋がっている。マネージャーレベルから通常の社員までの在職率の高さだ。エグゼクティブチームは20年も変わっていない。


「人」を重視する文化は収益にもつながっている。マッカーティー氏は言う。「ヘレナの強みは人であり、信頼関係です。だからこそ顧客は私たちと取引を続けてくれているのです。」「価格以上に、ヘレナの商品とサービス、人がもたらす価値で勝負しています」

顧客たちもこれに異論はないだろう。

ミシシッピー川近くの農家の三代目であるスコット・ウォーレン氏もまた、ヘレナに驚かされた顧客の一人だ。日曜日の夜に、700エーカーの畑に施肥をしなければならない状況で、メイソン支店のスタッフは夜9時までウォーレン氏と作業をしたという。ウォーレン氏は、他の企業はここまでしてくれないという。彼は全ての資材をヘレナから調達している。


「ヘレナは、私たちのビジネスを本当に親身になって考えてくれます」と彼は言う。嵐の翌日にはヘレナの担当者から、どこにどれだけ雨が降ったか、電話がかかってくるという。「これ以上に素晴らしい社員が集まった会社を見つけるのは難しいんじゃないかな」

(本文は、2017年6月、Helena Chemicalにて実施したインタビューをもとに作成しています。)

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