Scope #08

IFME

子どもに足を使わせる、
裸足感覚の靴
「買いやすくて、高機能で、おしゃれ」
を追究し続けるIFME

子どもたちの8割が、地面に足指が着かない「浮き指」になっている──。2015年12月に配信された読売新聞の記事によると、25年にわたって生徒の足型を調べている都内のある小学校で、浮き指が見られる子どもたちの数が10年前から倍増していることがわかった。外遊びの時間が減り、足を使わなくなったことが、その原因として挙げられている。浮き指の子どもは転びやすく、放っておくと姿勢の悪化や足の変形・痛みにつながる可能性がある。足に合わない靴を履くことは、浮き指を招く大きな原因のひとつだ。

丸紅フットウェアが手がける子ども靴「IFME」は、数々のオリンピック選手の主治医を務めた、故・小山由善先生の指導のもとで子どもの足の健康を第一に考えて設計され、2000年にデビューした。「子どもの足の健やかな成長を育む健康機能シューズ」をコンセプトに、現在も早稲田大学スポーツ科学学術院の鳥居俊先生の研究室と産学共同で研究開発を重ね、商品づくりに活かしている。

発売当初は小児向けの靴(15~21センチ)のみだったが、その後、より小さな幼児向けの商品も投入。現在、1歳から7歳までの子どものカジュアルシューズ市場で、約10パーセントのシェアを誇る。高い機能とおしゃれなデザインを兼ね備えながらも、消費者が「買いやすい」と感じる価格で提供していることがIFMEの強みだ。

立ち上げ当初から丸紅フットウェアと二人三脚でIFMEの商品開発を行なってきたデザイナーの下垣内隆徳氏は、子どもたちが遊ぶ姿を観察しているうちに、あることに気づいた。子どもは砂や水たまりなど、大人なら敬遠するところが好きだ。地べたに足をW字に曲げて座り込むから、靴の開口部から砂やゴミが入る。靴の中をきれいに保ってあげることも足の健康につながると考え、ソール(中敷き)を着脱式にすることにこだわった。さらに小山先生の発案で、親指の付け根と5本指のあたるところにくぼみを作り、裸足でいるときのような足指の自由な運動を引き出すようにした。これが「ウインドラスソーサー」だ。下垣内氏は「今でもIFMEの生命線は、このソールにあります」と話す。

IFMEらしい
「生意気な」デザイン

機能が最優先だが、大人のファッション・トレンドを取り入れた「ちょっと生意気」「ユニセックス」というデザインへのこだわりを、下垣内氏は持ち続けている。初代IFMEを世に送り出した当時の子ども靴売り場には、星やハートをあしらった、いかにも子ども向けのかわいらしい靴が多かった。だがIFME には、あえてイタリアンテイストの落ち着いたデザインと色を使うことにした。「子どもには早い」と心配する声をよそに、良く売れた。

近年は、以前よりもかわいらしいデザインが増えた。しかし下垣内氏は、あくまでもデビュー当時のコンセプトがIFMEデザインの「幹の部分」と話す。「僕の頭の片隅には、いつも『生意気』『ユニセックス』があるんです」

業界の常識を覆した
「IFMEの上履き」

IFMEには、ほかにも看板商品がある。2005年の春夏シーズンからラインアップに加わった上履きだ。名古屋市内のある幼稚園で試作品を2ヶ月間履いてもらうなど消費者の意見を取り入れながら、機能とデザインにこだわって開発した。

IFMEの上履きは、当時の平均的な価格の2倍を上回る1,500円(現在の小売価格は税抜きで2,300円)で発売された。「上履きは安くないと売れない」という業界の常識を覆し、発売当初から順調に売れ続けている。そして、消費者の声をもとに改良を重ね、機能性を高めてきた。現在は中敷きの表面にメッシュ素材を使い、裏側には通気孔が設けられている。靴底にも孔(あな)をあけて熱を逃がし、靴の中が蒸れないように工夫した。

このように、IFMEの上履きは靴の中が快適な状態に保たれるように設計されている。だが、上履きは子どもたちが毎日、室内で長時間履くものだ。どうしても臭いが気になることがある。そこで発売当初から、保護者が頻繁に上履きと中敷きを洗えるように、取り替え用の中敷きをつけて売っている。このことも、価格が高めでもIFMEが消費者から支持されている理由のひとつだ。

幼児がひとりで履ける
IFMEの上履き

子どもの足の健康に対する意識が高まるにつれて、IFMEの上履きを推奨する保育園や幼稚園が増えている。千葉市の聖こども園もそのひとつだ。園長の日暮さつき先生によると、2歳児保育に通う子どもたちの半数がIFMEの上履きを履いているという。同園では、子どもたちは玄関で上履きに履き替えるが、教室に入るとそれを脱いで遊び始める。このように「脱ぐ・履く」という動作を繰り返すため、硬い上履きだとこれが容易にできない。

「上履きが履けなくて泣く子も多く、園児にとっても先生にとってもストレスなんです」

2歳児クラスを担当する先生は、そう話す。柔らかくて2歳児でも楽に脱着できるIFMEの上履きが浸透してからは、履き替えにかかる時間とストレスが大幅に軽減されたという。

ななみちゃん(2)は、マジックテープのベルトがついたIFMEの上履きを使っている。屋外で履く靴と同じタイプなので、お母さんに教わらなくても、最初からひとりで履くことができた。「安いものもあるけれど、『自分で履く』という自主性を育てるために、IFMEの上履きを使っています」とお母さんは言う。

世界中の子どもたちの
足を健康に

IFMEのカジュアルシューズは、アジアを中心に海外でも販売されており、中国では主にオンラインショップで販売されている。

一般的に、商品を海外展開する場合は現地の好みに合わせて色を変更することが多い。たとえば同じ赤でも、シンガポールや台湾では黄味を帯びた朱色が好まれる。だがIFMEはあえて、日本と同じ赤のままで売っている。台湾では、販売開始からわずか3年後の2015年、育児雑誌「媽媽寶寶(mombaby)」の読者投票で「優秀大賞」に選ばれた。IFMEらしさへの強いこだわりが、文化の違いを超えて支持されている。

2016年の春夏シーズンからは、北米でも販売を開始した。子どもの足の健やかな発育を第一に考える親の気持ちに、国境はない。買いやすくて、高機能で、おしゃれなIFMEの靴は、世界各地で着実にファンを増やしている。

(本文は、2017年3月の取材をもとに作成しています)

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