Scope #02

Marubeni-Komatsu

英国の未来を築く

2012年のロンドンオリンピックスタジアム建設は、イギリス建設業界にとって非常にシンボリックな案件だった。Hawk社はこの建設に延べ150台もの建機を投入したが、これを納入したのがMarubeni-Komatsu Ltd(MKL)だ。MKLは、質の高いサービスと建機の品質が評価され、Hawk社より建設工事のパートナーとして選ばれた。同社に限らず、MKLはその建機性能と品質、現場でのサービス対応により、多くの顧客から信頼できるパートナーとしての評価を得ている。

MKLは世界第2位の建機メーカー・コマツの英国における販売代理店で、丸紅が1972年に設立した。MKLはそのアフターサービス体制が高く評価され、欧州では3社にしか授与されていないプラチナ・パートナーの称号をコマツ欧州から得ている。

「MKLのバックアップ体制と信頼性は他を圧倒している。機械故障時等のサポート対応は完璧です。」英国の中西部で採石業を営むJPE社のオペレーション責任者、Dave Rogers氏は語る。

英国建機市場は成熟段階にあり、建設工事も古くなったインフラの修繕・高度化などが中心となってきている。例えば道路にセンサーを装備することで、混雑状況をリアルタイムで把握し制限速度の表示変更を行うといった“スマート化”もその一つだ。一方で新規の住宅やオフィス、公共施設などの建設工事は相対的に少なくなってきている。そもそも建機業界は景気変動の影響を受けやすいと言われており、それはMKLの業績にも少なからず影響を及ぼしてきた。英国経済が盛り上がりを見せた2005~07年はMKLの販売も大きく伸張したが、金融危機後の2008~09年は厳しい状況に直面した。

「景気に左右される事業環境への耐性を高めるため、新車販売のみに依存することなく、サービス分野を強化してきました。これにより経営の安定性を高め、さらなる成長を目指しています。」とMKLの近藤一弘CEOは語る。

社内革命を起こし、企業文化を変える

顧客がMKLに求めることは多様だが、突き詰めて言えば機械を問題なく稼動し続け、高い生産性と効率性を実現することだ。そのためには機械を定期的にメンテナンスすることにより、故障を未然に防ぐ必要がある。MKLにとってこれは、新車販売時だけでなく、機械のライフタイムにわたり、顧客と関わり続けることを意味する。単に新車を販売し、故障の際にのみ顧客からの連絡でサービスを行うという受動的な立場から、顧客に対して能動的にサービスや業務サポートを行う企業へと戦略転換し、社内体制や従業員の意識改革を行う必要があった。

このためMKLでは、社内のサービスチームに焦点を当てるとともに、全従業員で顧客満足度の向上を目指している。その一環として、“Golden Spanner”と呼ばれるサービスチーム員向けプログラムを導入し、顧客満足度の向上に貢献したチーム員を毎月表彰することで彼らのモチベーションを高め、ブランドの向上に繋げようとしている。

「当社のミッションは “良い製品をさらにより良く” です。ミッションが社内に浸透するにつれ、サービスチームは販売面でも大きな役割を果たし、『1台目はセールチームが販売するが、2台目以降はサービスチームが販売する』をまさに地で行っています。」と、近藤CEOは語る。

技術革新と"KOMTRAX"

サービスチームが最大限その機能を発揮できるよう、MKLではIT活用にも注力している。4年前から全サービスチーム員に耐久性の高いPCやスマートフォン等のITデバイスを支給し、建設現場にいても必要な情報を瞬時に把握できるようにしている。それを可能にしているのが「KOMTRAX」と呼ばれるコマツのシステムだ。GPSによる機械の位置情報や稼働状況が遠隔からも分かる仕組みである。また、KOMTRAXの活用によりサービスの最適なタイミングを把握することが可能であり、以前は顧客の連絡を受けてから行っていたメンテナンスについても、今では主体的かつ計画的で最適なスケジューリングを行えるようになっている。

「KOMTRAXのおかげで、機械の調子が悪くなる前に対応できるようになった。以前は、機械がどこにあるかを特定するのも一苦労だったが、そんなのは遠い昔の話だよ。」サービスチームの一人、Dean Meeson氏は笑いながら語る。

長期メンテナンスサービス

これらの戦略転換は収益面にも変化を及ぼすようになった。従来はサービスチーム員が担当していたサービス契約を今では新車セールスチーム員が担うようになり、新車販売時には必ず長期メンテナンスと延長保証契約を組み合わせて提案するようになった。この結果、顧客は自社の機械を安心して使用し続けることができ、工事やプロジェクトの管理などのコアビジネスに集中することが可能となった。2011年にこの取り組みを始めて以来、メンテナンス契約率は開始当初の20%から60%まで増加、延長保証契約についても全新車販売の40%を超えるまでに成長した。

欧州域内の円滑な物流システム

質の高いサービスを保証するためには基本的なサービスを確実に提供することが不可欠であり、部品の安定供給も欠かせない要素の一つだ。MKLでは、顧客が部品をオーダーすると翌朝にはほとんどの部品が配送される仕組みを構築しており、MKLに在庫がない場合でもベルギーのブリュッセルにあるコマツ欧州の部品センターから翌日中に配送されることになっている。

環境に優しい製品

地球環境への意識の高まりとさらなる燃費性能向上の要望に応える形で、コマツは業界初となるハイブリッド建機を開発し、2007年から発売している。これにより最大40%、平均25%前後の燃費向上を可能としている。

次の世代のコマツの顧客たち

これまで英国のほとんどの子供たちは、建機のおもちゃといえば自国ブランドのものしか見たことがないはずだ。だが、次世代の子供たちは、建機のおもちゃと聞くと“コマツ”をイメージするかもしれない。2016年、MKLでは“Digger Land” と呼ばれる建機のテーマパークへの納車契約を受注した。このテーマパークは、子供が、ときにはその親たちも、ショベルカーに乗り込んで機械を実際に動かすことができる。MKLは、子供たちのこのような体験が将来のコマツファン作りに繋がるものと信じている。
(本文は、2016年6月、MKLにて実施したインタビューをもとに作成しています)

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