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「グローバル社会で勝負する」塩野七生・國分文也(丸紅株式会社社長)対談

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「グローバル社会で勝負する」塩野七生・國分文也(丸紅株式会社社長)対談

塩野七生
作家 1937年東京生まれ。学習院大学卒業後イタリアへ。68年に執筆活動を開始し『ルネサンスの女たち』を発表。『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』で毎日出版文化賞、『海の都の物語』によりサントリー学芸賞、代表作は『ローマ人の物語』全15巻(新潮社刊)。最新作は『ギリシア人の物語Ⅰ 民主政のはじまり』(新潮社刊)。2007年文化功労者に選ばれる。
國分文也
丸紅株式会社代表取締役社長1952年、東京生まれ。75年慶應義塾大学経済学部卒業、丸紅入社。2001年石油第二部長、03年中国副総代表、05年執行役員、10年丸紅米国会社社長、12年取締役副社長執行役員。13年より現職。
國分:
今回の塩野さんの新著『ギリシア人の物語』、面白く拝読しました。著作の中で非常に興味を持ったのは、塩野さんが〈イノヴェーションの塊〉と称されたアテネの軍人・テミストクレスです。彼は国防策としてアテネと外港ピレウスを一体化するためインフラ整備事業に取り組みましたが、その事業は同時に、アテネをギリシア世界の一大通商センターに押し上げました。われわれ商社も、新興国では様々なインフラ・ビジネスに携わっていますが、国の発展のためインフラ整備が要であることはギリシア時代から変わらないのだと感じました。
塩野:
なるほど。日本を代表する商社のリーダーならではの視点だと思います。
國分:
またアテネが中産階級を作り出したことで、民主政が始まったというお話も勉強になりました。
塩野:
中産階級を作らないと民主政は成り立たないし、社会も安定しない。例えばミャンマーなどは、これからは中産階級をいかに育てていくかが問われていくでしょうね。
國分:
経済の面においても、今、中国やアジア諸国を中心に分厚い中間層が生まれつつあり、消費市場が急速に拡大しています。私たち商社も、従来のB to Bを中心としたビジネスに加え、B to Cの領域も新たな成長分野と位置づけています。そして、新しいことにチャレンジしていくためには、ビジネスの前線にいる社員の活躍がとても大切だと思っています。社員には、現場を楽しんで達成感を感じ、仕事の醍醐味を味わって欲しいと思っています。顧客や市場の動きを肌で感じ嗅覚や判断力を培い、ぜひ世界中の現場で自分の力を試して欲しいですね。
塩野:
世界を視野に入れるのは重要です。ところが、グローバル化が進んでいる一方で、日本では組織の論理に縛られて、自由な挑戦ができなくなっているのをよく見聞きします。私自身、イタリアに渡ったのは1963年のことだったのですが、なんでも稟議や会議で縛られる今の企業ならば、ありえない方法での渡航でしたから。
國分:
そうだったんですか。
塩野:
ええ。私は当時、東洋レーヨン(東レ)の社外スタッフだったんです。そこではイタリアの雑誌や資料を翻訳して、現地の最新流行を重役を相手にプレゼンする仕事をしていたのですが、ある時会長さんにこの仕事を日本ではなくイタリア現地でさせてもらえないかと直談判したわけです。
國分:
それは大胆な挑戦です。
塩野:
ええ。当時モードといえばフランスでしたし、イタリアに注目している日本人はまだ少なかった。それでも、少しは仕事をしましたよ。例えば今、色がついているワイシャツは日本で当たり前に売られていますが、それを最初に日本に持ち込んだりとか。
國分:
とても面白いですね。塩野さんはひとりでイタリアに渡り、そこでご自分の価値を作っていったわけですが、僕自身も19年間の海外勤務の間はやはり苦労しました。会社という存在はあっても、営業の前線に行けば、自分を売り込むしかないわけで、つまらないやつと思われて議論できなくなったら、もう終わりです。語学はできるにこしたことはありませんが、一般教養も含めた人間力が必要だと痛切に感じました。

「とくに現場では、人間としての総合力が求められます」國分文也 「英語力ではありません、リスペクトされるかどうかが大事です」塩野七生

塩野:
今の人達は非常に上手な英語を話しますね。ですが、おっしゃっておられるように、大事なのはそこからです。英語は道具でしかないですから、英語を使ってどうやって自分の存在感を見せていくか。人間としてリスペクトされることが重要ですね。

國分:
語学で失敗しないことにこだわるあまり、現場で萎縮して自分の魅力を出せないのは確かに本末転倒です。グローバル競争を勝ち抜くためには「人間としての総合力」を磨く必要があります。今、丸紅は海外で活躍できる社員の育成に一層注力しています。現地には、「グローバル」と一言で片付けることはできない多様性が存在しています。歴史や文化、政治や人間性、さまざまな要素にビジネスが左右されます。このような状況や情報を科学的に分析し、現場において順応できる総合力が求められます。
塩野:
海外において、業績しか見ていないスクエアな人間は最も敬遠されます。「数字の向こうには人がいる」わけですから。まずは現場において「人たらし」であれということですね。
國分:
その通りですね。商社に勤めている人間のスキルとしては、「人たらし」であることは不可欠だと思っています。
塩野:
今はインターネットで、ボッティチェッリを見ようと思えばすぐに見ることができる。けれども実際に足を運んで絵の前に立たないとわからないことがある。メールも当然グローバル社会には必須ですし、否定はしません。だけれど、ここぞという時にはやはり顔と顔を合わせて、眼の動きや表情、そういった要素を判断して勝負に出る。こういった「勘」は現場で養われます。

國分:
そして、現場において、膨大な情報に囲まれる今の時代だからこそ、その中から優良な情報を抽出して、分析する能力が求められます。社員には、ぜひ、インテリジェンスを磨いていって欲しいと思っています。
塩野:
この複雑な、激動する社会の中で、現場に出ている社員はみな苦労しています。だからこそ、トップは社員を元気づける存在でなければなりません。イタリアではセレーノというのですが、晴れやかな顔であれ、ということです。
國分:
丸紅グループには、全世界に約4万人の社員がいます。その先頭に立って、「明るく、元気に、前向きに」、社員と共にグループの成長に努めたいと思います。ありがとうございました。

撮影:上田隆章(ANGIE studio)

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