ムンバイ/インド
Once Upon a Time in Mumbai
今井 正浩/丸紅インド会社
祖国を追われて来た者、一攫千金を求めて海を渡って来た商人、移民、凋落した王族と隷属民・・・かつての支配者は全てを受け入れた。人口1, 600万とも言われるインド最大のコスモポリタン・ムンバイは、天然の良港を基盤に、占領軍達が周囲の島々を埋め立てて造った商業都市だ。BRICsの一角として、最近でこそ日本のTVや雑誌でも露出が増え、インドは身近な国になりつつあるが、ムンバイだけを見てもその表情は限りなく多面性・多様性に富み、日々発見のある町である。人々はその歴史と、昨今の地価高騰になぞらえ、この地を「インドのマンハッタン」とも呼ぶ。
ベストシーズンは乾季(11月〜2月)で、一年を通じ最も過ごし易く、凌ぎ易さを通り越して肌寒いと感じる日すらある。二百数十名程度しか日本人のいないこの町には、週末のスポーツ以外には娯楽が少なく、時間の潰し方に苦慮する。インド料理は口に合っても、やはりとにかく鮮魚が食べたい。その想いを叶えるべく、週末には朝6時に家を出て、漁船が着くサスンドックへ。買い出しのお姐さん達に押し合いへし合いされ、時に空から降って来る魚をかわしながら、たどり着いた先にはタイ、ハタ、太刀魚、マグロ、マナガツオ・・・さながら宝物探し。しこたま買い付け、とりあえず氷詰めにしてゴルフ場へ。
午後、同志と魚をさばきつつ、魚に飢えた友人が集う酒宴に備える。時には隣人、大家も招いて、深夜まで多国籍パーティー。「最も旬なインド生活の極み」ここにあり。
それから20年の歳月が流れ、時は2028年2月。インド初のオリンピック開催に沸く映画の町・ボリウッドことムンバイ市内の洒落た三ツ星和食レストラン「カオス」では、アカデミー賞常連組の華やかなボリウッドスター、世界の長者番付上位に並ぶ地元名士達で溢れかえり、摩天楼に浮かぶ美しいムンバイタワーを眺めながら、インド人が握った何処となく“マサラな寿司”とビンテージものインドワインを片手に、あの日のインドの想いに耽る…これは実際に起こってしまう話なのだ。
高層マンションから市内を望む
サンスドックの魚市場
ムンバイ支店スタッフの面々
世界遺産・旧ビクトリア駅
丸紅グループ誌 『M-SPIRIT』 No.45 (2008年5月発行) より



