サントス(2)/ブラジル
サッカーとコーヒーとビーチの街
浅川 秀樹/Exportadora e Importadora Marubeni-Colorado Ltda.
私が初めて出会ったブラジル人はロベルト本郷という漫画の中の人物でした。日本のサッカーブームの火付け役となった漫画「キャプテン翼」の中で、主人公大空翼くんの才能を見出す元ブラジル代表の10番です。ロベルト本郷は日系人ながらブラジル代表となるも、網膜剥離で選手生命を絶たれ、自殺未遂の末、日本に辿り着くという何とも波乱万丈な設定なのですが、当時小学生だった私の夢を膨らませるには十分魅力的でした。影響を受け易い私は、当たり前のようにサッカーを始め、気が付けば大学卒業までサッカーボールを追いかける生活をしていました。漫画に青春を左右されるという何とも言えない人生ですが、私の世代には似たようなコースを歩んだ方も多いのではないでしょうか。
さて、そんな私が駐在しているのはサッカータウンのサントスです。サンパウロやリオデジャネイロのような大都市ではありませんが、サッカー王国ブラジルの中で最も文化が根付いている街のひとつだと思います。夕方ともなると広大なビーチにどこからともなく人が集まり、無数の即席コートで老若男女がサッカーを始めます。裸足の子供達の足技を見ていると日本との裾野の広さの違いを感じます。
地元のプロチーム「サントスFC」といえば、サッカーの王様ことペレですが、日本人にはキングカズこと三浦和良選手が活躍したことからも馴染みのあるチームかと思います。ヴィラの愛称で親しまれるホームスタジアムには徒歩で行くのがサンチスタ(サントスっ子、サントスファンの意味)流です。私もよく観に行きますが、なんと平日夜9時50 分キックオフという設定の日があり、多忙な商社マンには大助かりです。
サントスのもうひとつの顔はコーヒーです。今では南米最大の貨物量を誇るサントス港ですが、もともとはコーヒーの輸出港として栄えたため、町並みのそこかしこにコーヒーの歴史を感じることができます。改装が禁止され昔ながらの佇まいを残した旧市街の一部、ほんの100m四方程の区画に、多数のコーヒー業者が集結しており、そこを毎日コーヒーマン達が行き交います。私の勤める丸紅コロラド(もちろんコーヒー業者!)もそんな歴史の中にあります。窓を開ければ目の前に旧コーヒー取引所がそびえます。すでに取引所としての役割は終えたものの、往年の威厳を彷彿とさせる存在感は今も健在です。私もこんな素敵な年の取り方をしたいです。
実はサントスと日本人とは意外な関わりがあるのです。1908年に日本人移民がブラジルに初めて到着した際辿り着いたのがここサントスなのです。その後100年以上にわたりブラジルの地に根付き、今ではブラジル全土に100万人以上の日系の方が居られるといいます。移民の方々は入植後に相当な苦労を重ねられましたが、次の世代の教育に非常に熱心で、農業だけでなく、法曹、医療関係に従事する方が非常に多いのです。先人の努力のお陰で、私のようなふつつか者でも日本人というだけで一目置かれます。ほんとラッキーです!
最後に、5q以上続くビーチと世界最大のフロントガーデン、こればかりは言葉で伝えるのが難しいので、ご興味のある方は是非水着持参でいらしてみてください!
サッカーと共に生き、コーヒーのロマンとビーチの誘惑に酔う、そんなサンチスタ達の生活の一部をご紹介したつもりですが、結局ほとんど自分の話になってしまいました。ごめんなさい!
ヨーロッパの雰囲気の漂うサントスの旧市街と旧コーヒー取引所
ビーチでサッカーを楽しむサンチスタたち
丸紅グループ誌『M-SPIRIT』No.66 (2011年11月発行) より



